1.醤油 

 1.1 醤油の歴史
  醤油のルーツは醤(ひしお)である。
  醤とは、塩漬けの醗酵食品で紀元ころから700年ころには存在し、草醤(くさびしお)、
  魚醤(しおから)、穀醤(こくしょう)が作られていた。
    草醤:果実、野菜、海草などの塩漬けで漬物の原形
    魚醤:魚肉及び内臓などを塩漬けにして醗酵させたもので塩辛の原形
    穀醤:穀類の塩漬け、すなわち米、麦、豆などの醗酵食品で、味噌の原形

  ・初めて作られた醤油:湯浅醤油
  1228年に信州の禅僧である覚心(法燈国師)が、源実朝をとむらうために宋の径山(きんざん)
  興聖万寿寺に赴き、その修行中に興座寮(台所)で習得した未醤の製法を持ち帰った。
  由良の西方寺(現在の興国寺:和歌山県日高郡由良町)を興し、そこで、宋で習得した
  径山寺(金山寺)味噌の製法を村人に伝授した。

  その製造中に器の底に溜まった液汁が大変美味であることに気づき、1288年にはこれを生業
  とするものが現れた。 これが、
湯浅醤油の発祥といわれている。 (現在の有田郡湯浅町、
  日高郡由良町)
    径山寺未醤(味噌):小麦粉、穀粉を練って団子を作り、これにクモノスカビが主となる
    (キョク)という麹をまぶし、クモノスカビの着生を待った後に塩水を混ぜて造った未醤。


  ・16世紀ころには、味噌玉式餅こうじによるいわゆる「溜まり醤油」が日本各地に出現していた。
  この方式は式が原料大豆を煎ってから練って団子を造ったのに比べて、大豆を水に浸して
  から蒸煮して味噌玉、すなわち団子状したため、原料の処理法が一段とよくなり、味噌として
  食用に供しても、あるいは溜まり汁を汲み上げて液体調味料としても大変美味しいものとなった。
  これは、 蒸煮することにより大豆の蛋白質 が分解されやすくなって、製品にアミノ酸が著しく
  増加したためである。

  朝鮮ではすでにこの方法は発明されており、これが日本に伝来し、日本の気候風土がカビ
  (特に麹カビ)の生育に適していたことから、日本に根付いたものと思われる。
  16世紀末には、味噌玉式「溜まり醤油」が式の未醤にとって代わってしまったようだ。
  
  ・16世紀末(1644年)、湯浅の浜口儀兵衛が房州の銚子に渡って、醤油の醸造を開始するに
  至った。
  湯浅の近くの印南の漁師が鰹を追って房総まで行ったという記録が残っているが、醤油もこの
  ルートで銚子に伝わったのである。そば汁に不可欠な鰹節と醤油の生産の基礎が、印南の
  漁師によって、各地にが作られたわけである。


  ・清酒製造技術を揺籃にして発達した本格的醤油製造技術
  16世紀末の日本酒の製造には、こうじカビを利用した醸造技術が確立されていた。すなわち、
  こうじカビの純粋培養技術、こうじカビによる醗酵と加熱殺菌することにより醗酵をコントロール
  する技術がすでに用いられてていたということである。

  この日本酒の醸造技術を用いて本格的な醤油醸造がおこなわれるようになった。
  散麹(バラコウジ)による醤油の醸造である。「溜まり醤油」のこうじ造りが、「花取り」と称して、
  味噌玉原料へのこうじカビの自然着生によっていたのに対し、本格醤油では、培養した麹カビ
  を、原料の中に混ぜ込んだ、「散麹」の技法を用いたのである。
  
  都合の良いことに、醤油の醸造には、酒造用の諸器具や機械の不要になったものをそのまま
  充当することが出来た。(江戸時代の初期、17世紀後半には、幕府により度々酒の醸造が
  制限されたので、酒の醸造に使われていた生産設備が醤油醸造に転用された。)
  川田正夫氏の「日本の醤油」に、17世紀末に伊丹の大塚本家で造られた「汁醤油」が本格
  醤油の発祥ではないか、記されている。

  醤油作りの要点は「手入れ、櫂入れ、火入れ」といわれているように、「手入れ」は製麹管理を
  、「櫂入れ」は醗酵管理を意味しており、「火入れ」は滅菌し、醤油の角をとり、味にまろやかさを
  出す重要な工程を意味している。現在は生産設備は近代的になっているものの、本格醤油
  醸造の工程は今も昔も変っていない
。  

 1.2 醤油の種類
  現在作られている醤油には次のようなものがあります。
  濃口醤油:日本全国で造られており、その土地によって味や製法などに特徴がある。
         つけ醤油、かけ醤油として、また煮物などに広く使われている。
  
  薄口醤油:「薄口とは、色が薄いの意味で、塩分は濃口醤油より2%ほど高めである。
         淡い色のため、野菜の煮物など素材の色を生かした料理に用いられる。

  溜まり醤油:古来の溜まり醤油の製法を引き継ぎ、東海3県(愛知、岐阜、三重)で造られ
         ている。色、味共濃厚で、濃口醤油と同様に使えるが、ツヤとコクが出るので
         照り焼きなどの料理に向いている。

  再仕込み醤油:一度出来上がった生醤油に、二度麹を入れる二度仕込みの醸造法で
         造られたもの。こってりとした濃度の高い醤油で、刺身のつけ醤油のほか、
         鍋物のつけだれや料理の隠し味などに用いられる。

  白種油: 薄口醤油よりもさらに淡いビールのような色をしており、糖分も他の醤油より
        高い。発祥は愛知県碧南市で、現在は愛知・千葉・群馬などが生産地である。
        だしとの相性が良く、玉子焼きや茶碗蒸しなどの適している。




 1.3 醤油の成分
  醤油の成分はは食塩と旨み成分の主体であるたんぱく質から由来する窒素化合物
  である。旨みの主成分はアミノ酸、グルタミン酸、アスオアラギン酸、ロイシン、アラニン、
  リジン、チロシンなどであり、これらが寄り合ってバランスのとれた複雑な味を造りだし
  ている。
  甘みを支えているのがグリセリンや一部のアモノ酸である。
  醤油のph値は4.4〜4.8位で、酸味も旨みの脇役であり、その主成分は乳酸である。
  ほかに食塩に含まれているマグネシウム化合物はわずかな苦味を与え、全体の味を
  引き締めている。
  これら分かっている成分を寄せ集めてみても、絶対に醤油のような旨い調味料になら
  ないことからみて、醤油は自然界の営みが作り出した調味料の傑作といえよう。

                               
 1.4 JAS規格による分類



                         参考文献 川田正夫著「日本の醤油」(山水社)


2.味醂
  現在市販されているみりんと名のつくものには、酒類として扱われている「本みりん」と
  一般調味料として売られている「みりん風調味料」がある。
  かえしに用いるみりんは酒屋さんで売っている「本みりん」であるが、同じ「本みりん」でも、
  造り方により、風味やこくに差が出てくる。

  伝統的な手法で造られたみりんは「本格みりん」と呼ばれ、原料はもち米、米こうじ、焼酎を
  原料とし、風味もあり、お酒として飲んだり、調味料として使われている。
  
  一方、甘みをつけるため糖類を添加し、工業用アルコールを加えたものは、「新式焼酎使用
  みりん」、「合成みりん」とよばれ、もっぱら調味料として用いられている。

  かえしには、伝統的な手法で造られている「本格みりん」の方が良くあう。鰹節のだし汁と
  醤油がそば汁の味を決めるが、味醂は隠し味として、そば汁に味の深みを与えてくれる。

  
 




3.砂糖
  かえしの中で、砂糖の持つ役割は、甘みをつけることである。砂糖自身が持つ味は出来る
  だけ控えめのほうが良い。
  そうすると、白双糖(しろざらとう)や氷砂糖(こおりざとう)に行き着いてしまう。



4.かえしを作る
  かえしの造り方には、醤油と味醂と砂糖をあわせ、沸騰寸前まで加熱する本がえしの方法と
  加熱せず常温で熟成させる生がえしの二つの方法がある。

  醤油と味醂と砂糖の配合の割合は、お蕎麦屋さんに昔から伝わっている伝統的な調合方法
  によると「1(斗):2(升):3(kg)」である。
  醤油18Lに対し味醂3.6L、砂糖3kgの割合である。
  これを換算すると醤油 1L に対し、味醂 200ml、砂糖 170grになる。
  この割合を守ってかえしの調合をおこなえば、まずは標準的なかえしを作ることが出来る。
 
  「本かえし」の場合は、まづ、味醂を加熱しアルコール分を飛ばす。これに砂糖を加え、中火
  で良くかき混ぜながら溶か仕込む。
  次に醤油を加え、85〜95℃に加熱する。加熱が沸騰に近いほど、醤油の揮発成分が飛ん
  で、甘みの強いかえしとなる。

  荒熱を取ったあと、広口の容器に入れ、密閉せずに冷暗所に保管する。これを「寝かせる」
  という。この間に、醤油の角が取れ、丸みのある味に変っていく。
  寝かせる時間は1週間から10日ほどである。