麺棒製作教室 (巻き棒)
長さ100cmの巻き棒の製作に挑戦します。 材料は比較的安価な米ヒバです。
米ヒバはアラスカヒノキともいわれ、アラスカからオレゴンの太平洋岸に分布するヒノキ科の針葉樹である。
ヒノキに較べ粘りのある木質で、加工をしてみるとその違いが分かる。
ヒノキは鉋かけが容易で、薄い鉋屑がでてくるが、米ヒバは鉋の食いつきが悪く、しかも逆目に削ると
ザラザラの面になってしまう。
木目はヒノキほどはっきりして
おらず、さらに拡大してみると
細かい繊維質が絡み合っている
のが分かる。
ヒノキは木目の方向とこれと直角
方向の差がはっきりしているが
米ヒバはこの差が余り見られず
冬目とそれ以外の差も少ないのは
細かい繊維質が絡みあっている
せいかも知れない。
巻き棒の径は、延し棒に同じか少し太めに作るのが一般的である。
今回製作する巻き棒は、延し棒と同じ道具を使って製作するので、延し棒と同じ27mmの径とする。
年輪の密度による出来上がりの違いを確認するため、目のつまっている材と目の粗い材との2種類で
試作をしてみた。
目の粗い材
目のつまっている材
10mmの間に37本の木目がある。
鉋をかけるときに逆目にならないように注意する必要がある。
切れる鉋で、薄く削っても逆目であると、ささくれが生じる場合がある。
逆目に削ったとき生じる
ささくれ
製作の手順は延し棒と同じであるが、最後の仕上げの段階でヒノキ材と米ヒバ材の違いが出てくる。
米ヒバは材質が緻密であるので、濃縮した米の研ぎ汁で仕上ると木肌がつるつるになり、
#400のサンドペーパーでは、木を削りこむことが難しくなる。
米の研ぎ汁で仕上る前に、#400のサンドペーパーをアルミパイプできちんと押さえ、緩みの無い状態で
真円に近い状態に仕上ることが大切である。
棒の長さ方向に太さが一定になるように、定規となる内径27.5mmのアルミパイプで太さを確認すること
も忘れずに行う。(パイプの中を無理に通そうとすると、またはサンディング中にきついところを無理に通そう
とするとせっかく仕上た表面に凹みが生じ、今までの苦労が水の泡となってしまうのでくれぐれも注意すること。)
表面の仕上げ
ヒノキに較べて、米ヒバは細胞壁の中の空隙が少ないため、米の研ぎ汁や豆乳を用いても、油脂コロイドが
十分に染み込まず、木肌表面の滑りが思ったほど改善されない。
乾性油で表面に皮膜を作るほうが、材質が密な米ヒバには適していると思う。
今回はエゴマ油を用いることにした。胡桃油に比べ脂肪酸の不飽和度が高いので、その分硬化するのが
早いはずである。 エゴマ油について
左から、エゴマ油仕上げ2週間(毎日1回の手入れ)、エゴマ油仕上げ1週間(毎日1回の手入れ)、素地の麺棒
である。塗る回数が多くなると、深みを増した黄色になってくる。
エゴマ油は硬化が早いので、毎日手入れをすることが出来る。
手入れの方法は、エゴマ油を1,2滴手のひらにつけ、両手をこすり合わせてから、この手で麺棒をしごく。
このとき滑りが悪いようであれば、前に塗った皮膜が硬化していないと思われるので、塗る間隔をもっとあけるよ
うにする。
滑りを確認しながら塗っていくことが、大切である。
木目の密度に起因する材質の違い
ヒノキ材では、木目の密度の違いによる材質の違いがはっきり認められた。
木目が粗くなると、冬目に較べて他の部位は材質が柔らかくなることから、棒の表面が滑らかでなく
凹凸があるように感じられた。
一方、米ヒバ材では、木目の密度と表面の滑らかさは、ヒノキほど差はなかった。
冬目と他の部位の密度があまり変らないことから、このような結果になるのであろう。
巻き棒製作のために米ヒバの原材を求めるときは、年輪が密であるにこしたことはないが、木目の
通ったものを購入すれば間違いは少ない。
左は木目の細かい麺棒、右は木目の粗い麺棒。 表面の滑らかさはあまり変らない。