だし汁の中の遊離アミノ酸のなかで、ヒスチジン塩(5'イノシン酸=5'IMP)が飛びぬけておおい。
鰹節に含まれるヒスチジンの70%がだし汁の中に溶け出している。これがだし汁の旨み成分である。
2.節の削り方
日本農林規格の定める削り節の厚さは
薄削り:削り節を平らな削り刃で厚さ0.2mm以下の片状に削ったものをいう
厚削り:削り節を平らな刃で厚さ0.2mm以上の片状に削ったものをいう
「削りぶし」、「花鰹」は薄削りが主流であるが、「厚削り」は蕎麦店向けのものが多く、0.3〜1.0mmの
厚みがあり、厚いものになると1.5mmに達するものがある。
3.煮出し時間とつめ加減
削り節の厚みにより煮出し時間は変ってくる。
「薄削り」の場合は、「沸騰寸前に入れ、もう一度沸騰したら直ちに火を止め、だしがらが沈んだ
ところで濾し分ける」のが一般的な方法である。
一方、厚削りの場合はだしを抽出する時間に煮詰める時間が加わり、お店によって差が出てくる。
時間的には、20分から2時間と大きな差があり、30分と45分が一番多い。
しかし、火力と容器の形により水の蒸発量が異なってくるので、何時間煮詰めたというよりも何%
煮詰めたかのほうがより重要になる。
御茶ノ水女子大学家政学部の
吉松藤子教授による研究で、
削り節の厚みと時間による抽出
量の変化が調べられている。
実験は水の蒸発は抑えられており、
煮詰め効果が無いようにしてある。
浸出する全エキス分は、薄削りの
場合、時間に比例して増加するが、
厚削りの場合は40分までは急激に
上昇し、40分を過ぎると浸出量は減
少してくる。
旨み成分の5’イノシン酸は、薄削り
の場合、時間と共に僅かながら減少
傾向にあるが、厚削りの場合は40分
までは、増加するが、以降は緩い
勾配となる。
煮詰め効果を考えなければ、40分間
煮出せば、削り節の旨み成分は十分
に取り出せることになる。
1.鰹節だしの成分
鰹節100gを用いただし汁中の遊離アミノ酸組成表(単位g)
イソロイシン | 0.033 |
ロイシン | 0.042 |
リジン | 0.075 |
含硫アミノ酸 | 0.028 |
芳香族アミノ酸 | 0.056 |
スレオニン | 0.038 |
トリプトファン | 0..004 |
バリン | 0.055 |
ヒスチジン | 2.955 |
アルギニン | 0.012 |
アラニン | 0.081 |
アスパラギン酸 | 0.022 |
グルタミン酸 | 0.036 |
グリシン | 0.094 |
プロリン | 0.042 |
セリン | 0.034 |
つめ加減 | 割合(%) |
10%以下 | 32 |
10〜20% | 29 |
20〜30% | 19 |
30〜40% | 14 |
40〜50% | 4 |
50%以上 | 2 |
藤村和夫著「そばつゆ&うどんだし」によると、有名蕎麦店5店の煮詰め具合は57%、23%、34%、22%、
40%であったという。上のグラフでいうと、煮詰めの割合の高い範囲に入る。
4.加熱時間とエキス抽出量の関係
藤村和夫著 「だしの本」 p174 のデータによる
同じく吉松藤子教授による
研究で、蕎麦屋で実際に
だし汁を煮詰めている状態
で、2分間隔で出し汁のサン
プルを採り濃度を測定したも
のである。
煮詰めによる濃縮効果がある
ので濃度は一気に上昇するが、
10分を経過する頃から、濃度が
横ばいになる棚が現れる。
煮詰め効果により濃度は上昇す
るはずであるが、横ばいになる
ことは、エキスが削り節の中に
戻っていることになる。
更に42分経過して時点で、濃度
の減少がみられ、はっきりと
味が薄くなっているといえる。
昔から蕎麦屋でいわれている
「だしが帰った」といわれる現象で
ある。
5.鰹節(本枯節)の量・煮詰率とだし汁の濃度との関係