オクタゴンと電動石臼の挽き比べ

1.使用した製粉機
 ● オクタゴン : ドイツ製の卓上製粉機で、セラミック製の高速で回転する上臼と静止している下臼の
  間に原料を投入し、凹凸のある面の間で粉をはじき飛ばすことによる衝撃で粉を粉砕する製粉機。
  オクタゴンのほかに同じメカニズムで粉砕する製粉機にモーラ、フィディバス等がある。
       オクタゴンのメーカーのHP、 TOKYO蕎麦塾のUさんのフィディバスのレポート → 製粉機

  
 ● 電動石臼   水田工業株式会社製 (石うす一番)
 
   

製品の特徴
 1.軽量で小型であるが、中型石臼並みの性能がある。
 2.バネで上臼を押さえつけることで、最大で50kgの上臼を載せた状態の製粉が可能である。
 3.原料の供給は、もの配りの上にホッパーの筒先を持ってきた単純な機構であるが、製粉量に
   合った原料の量を投入できる。但し、原料が粉状になった時にホッパーの下部のパイプの
   入り口で詰まる恐れがあり、改良の余地は残る。
 4.軽量であるので、清掃、持ち運びが容易である。
 5.上臼は平面で下臼に1.5mmのフクミがとってある。 
 6.溝は6分割の副溝9本からなり、溝は外周より少し入ったところで止まっている。 写真
 

2.製粉の手順

.オクタゴンと電動石臼(石うす一番)の製粉の違い

オクタゴンで製粉した粉の顕微鏡写真 (丸抜きは音威根府産の玄そばを池田製粉で抜き身にしたもの)

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耳掻き一杯分のそば粉を3〜4cmの所からスライドグラスの上に落下させたものを、右に行くほど高倍率で
撮影した。
左の写真で、粉の全体像がつかめる。20メッシュの篩を通らない大きさの粗い粒が混じっている。
出来上がった蕎麦は、期待したほどの香りがなかった。(超粗挽きのせいか? 高速粉砕のせいか?)
中程の写真で、石臼挽きの粉より粉の角が立っていることが分かる。

電動石臼(石うす一番)で製粉した粉の顕微鏡写真 (丸抜きは上に同じ)

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オクタゴンの粉と同じ粒度分布になるように製粉してみた。
左の写真では差は明らかではないが、拡大すると粉の雰囲気が変わってくるのが分かる。

オクタゴンと石臼挽きの粉の違い

外見はあまり差のないように見えるが、拡大して見ると違いが分かる。
オクタゴンで挽いた粉は、砕いたばかりの氷のように透明感があり、角が立っている。
一方、石臼で挽いた粉は時間が経過して表面が解け始めたカキ氷のように、角が丸みを帯びている。

手にとって握ってみると更に違いが分かる。 石臼で挽いた粉は鳴き砂のようにキュッキュッと音を立てる。
一方、オクタゴンで挽いた粉は握っても音が小さい。 

鳴き砂は永い年月をかけて、ぶつかり合い擦れあって入るうちに砂の粒子の角が取れて丸みを帯び、
そして砂の粒度が揃っているときに、摺り合せたときにキュッキュッという摩擦音を発する。
そば粉の澱粉の固まり(ミセル)も細分化されて角に丸みができると、擦れ合ったとき摩擦音を発する。

同じ加水量で練ったとき、石臼挽きの粉の方が柔らかい弾力性に富んだ玉になる。
丸出し、延しも容易になり、無理なくそば切りの作業を終えることができる。
口にした食感を比較すると、石臼挽きに軍配を上げざるを得ない。 歯切れの良い弾力性とのどごしの良さ、
口に残る蕎麦の香りの余韻、同じ丸抜きから作った蕎麦とは思えないくらいの差が感じられる。